観光庁が毎月公表する宿泊旅行統計調査の最新データを要約します。この記事では、2025年の年間値(速報値)と2026年1月の最新速報値をもとに、延べ宿泊者数の動向を解説します。
目次
宿泊旅行統計調査とは
宿泊旅行統計調査は、観光庁が全国の宿泊施設を対象に毎月実施する統計調査です。ホテル・旅館・簡易宿所などの延べ宿泊者数を日本人・外国人別に集計しており、国内の観光需要や宿泊市場の動向を把握するための基礎データとして活用されています。
主な指標は以下の通りです。
- 延べ宿泊者数 — 宿泊施設に宿泊した人数の合計(1人が2泊すれば2人泊と計上)
- 日本人・外国人別内訳 — 国内旅行者と訪日外国人の宿泊動向
- 客室稼働率 — 施設タイプ別(ビジネスホテル・シティホテル・旅館等)の稼働状況
- 都道府県別集計 — 地域ごとの宿泊需要の偏在
要点
- 2025年の延べ宿泊者数は 6億5,348万人泊 で前年比▲0.8%とほぼ横ばい
- 外国人宿泊者は 1億7,787万人泊 で前年比+8.2%、過去最高 を更新
- 日本人宿泊者は 4億7,561万人泊 で前年比▲3.8%と減少傾向
- 外国人比率は 27.2% に上昇(前年25.0%)、4人に1人以上が外国人宿泊者
- 客室稼働率は全体 61.8%、ビジネスホテルが 75.3% で最も高い
延べ宿泊者数の推移
2019年以降の延べ宿泊者数(億人泊)の推移です。2020〜2021年はコロナ禍で大幅に減少しましたが、2023年以降は回復し、2024年に過去最高の6.59億人泊を記録しました。
| 年 | 全体(億人泊) | 日本人(億人泊) | 外国人(億人泊) | 前年比 | 2019年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019年 | 5.96 | 4.81 | 1.16 | — | 基準年 |
| 2020年 | 2.93 | 2.71 | 0.22 | ▲50.9% | ▲50.9% |
| 2021年 | 2.38 | 2.36 | 0.02 | ▲18.8% | ▲60.1% |
| 2022年 | 3.67 | 3.51 | 0.16 | +54.2% | ▲38.4% |
| 2023年 | 5.84 | 4.99 | 0.84 | +59.0% | ▲2.0% |
| 2024年 | 6.59 | 4.87 | 1.64 | +6.7% | +10.6% |
| 2025年 | 6.53 | 4.76 | 1.78 | ▲0.8% | +9.6% |
※ 2024年は確定値、2025年は速報値(2026年2月27日公表)
月別推移(2025年)
2025年の月別延べ宿泊者数の推移です。8月がピーク(6,682万人泊)で、夏季休暇の需要が顕著です。
| 月 | 全体(万人泊) | 日本人(万人泊) | 外国人(万人泊) | 前年同月比(全体) |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 5,004 | 3,486 | 1,518 | +9.6% |
| 2月 | 4,833 | 3,503 | 1,330 | +1.0% |
| 3月 | 5,697 | 4,193 | 1,504 | +3.4% |
| 4月 | 5,336 | 3,697 | 1,639 | +2.8% |
| 5月 | 5,638 | 4,066 | 1,572 | +3.7% |
| 6月 | 4,921 | 3,597 | 1,324 | ▲2.8% |
| 7月 | 5,640 | 4,217 | 1,423 | ▲1.4% |
| 8月 | 6,682 | 5,329 | 1,353 | +0.8% |
| 9月 | 5,499 | 4,198 | 1,302 | ▲0.2% |
| 10月 | 6,025 | 4,302 | 1,723 | +1.1% |
| 11月 | 5,772 | 4,251 | 1,520 | ▲0.7% |
| 12月 | 5,342 | 3,853 | 1,490 | ▲4.5% |
※ 前半は外国人の大幅増(+13〜35%)が全体を牽引。6月以降は外国人の伸びが鈍化し、日本人の減少と合わせて前年割れの月が増加
最新月次データ(2026年1月 第1次速報値)
| 指標 | 数値 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 全体 | 4,628万人泊 | ▲5.3% |
| 日本人 | 3,308万人泊 | ▲1.9% |
| 外国人 | 1,320万人泊 | ▲12.9% |
※ 2026年2月27日公表。2026年1月調査分より宿泊施設の層化基準が「従業者数」から「客室数」に変更されており、前年との単純比較には注意が必要
外国人宿泊者の国・地域別内訳
上位10か国・地域(2025年 年間速報値)
| 順位 | 国・地域 | 延べ宿泊者数(万人泊) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 3,040 | +20.6% |
| 2 | 台湾 | 1,969 | — |
| 3 | 韓国 | 1,748 | — |
| 4 | 米国 | 1,729 | — |
| 5 | 香港 | 651 | — |
| 6 | 豪州 | 635 | — |
| 7 | タイ | 406 | — |
| 8 | シンガポール | 404 | — |
| 9 | 英国 | 340 | — |
| 10 | カナダ | 294 | — |
- 中国が宿泊者数1位に返り咲き(前年比+20.6%)
- 訪日外客数では韓国が1位だが、宿泊者数では中国がトップ(1人あたりの宿泊日数の差を反映)
- タイが初めて400万人泊を超え、東南アジア市場の成長が続く
都道府県別の宿泊者数
上位8都道府県(2024年 確定値)
| 順位 | 都道府県 | 延べ宿泊者数(万人泊) | 2019年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 東京都 | 11,035 | +39.7% |
| 2 | 大阪府 | 5,743 | +21.1% |
| 3 | 北海道 | 4,463 | +20.7% |
| 4 | 京都府 | 3,421 | +11.3% |
| 5 | 沖縄県 | 3,128 | ▲4.8% |
| 6 | 千葉県 | 2,804 | — |
| 7 | 神奈川県 | 2,530 | — |
| 8 | 福岡県 | 2,316 | — |
- 東京都は1億1,035万人泊で他を大きく引き離す
- 大都市圏(東京・大阪・京都)はインバウンド需要の恩恵を受け、2019年比で大幅増
- 沖縄県は2019年比▲4.8%で、主要観光地の中では回復が遅い
客室稼働率
施設タイプ別(2025年 年間速報値)
| 施設タイプ | 2025年 | 2024年 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 61.8% | 60.5% | +1.3pt |
| 旅館 | 38.4% | 36.8% | +1.6pt |
| リゾートホテル | 56.9% | 54.6% | +2.3pt |
| ビジネスホテル | 75.3% | 73.9% | +1.4pt |
| シティホテル | 74.2% | 72.4% | +1.8pt |
- 全施設タイプで前年を上回り、稼働率は改善傾向
- ビジネスホテルが75.3%で最も高く、出張・ビジネス需要の堅調さを反映
- 旅館は38.4%と他タイプに比べ低水準だが、前年から+1.6pt改善
解説
外国人宿泊者の過去最高と日本人の減少
2025年の延べ宿泊者数は6億5,348万人泊で、過去最高だった2024年(6億5,906万人泊)からわずかに減少しました。内訳を見ると、外国人宿泊者は1億7,787万人泊と過去最高を更新した一方、日本人宿泊者は4億7,561万人泊で前年比▲3.8%と減少しています。外国人比率は27.2%に上昇し、宿泊市場における外国人の存在感が一段と高まっています。
訪日外客数と宿泊者数の違い
訪日外客数では韓国が946万人で国別1位ですが、宿泊者数では中国が3,040万人泊でトップです。これは1人あたりの宿泊日数の違いを反映しています。中国からの旅行者は滞在日数が長く、複数都市を周遊する傾向があるため、宿泊者数では訪日人数以上の存在感を示します。
宿泊需要の都市集中
都道府県別では東京都が1億1,035万人泊と突出しており、2位の大阪府(5,743万人泊)のほぼ2倍です。東京・大阪・京都の3都府県はいずれも2019年比で10%以上の増加を記録しており、インバウンド需要が大都市圏に集中する傾向が見られます。一方、沖縄県は2019年比▲4.8%と主要観光地の中では回復が遅れています。
2026年の動向
2026年1月の延べ宿泊者数は4,628万人泊で前年同月比▲5.3%と減少しました。ただし、2026年1月調査分より宿泊施設の層化基準が変更(従業者数→客室数)されたため、前年との単純比較には注意が必要です。旧正月の時期のずれ(2025年は1月、2026年は2月)も外国人宿泊者の減少(▲12.9%)に影響した可能性があります。