文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が2025年8月に公表した「科学技術指標2025」(調査資料-349)のデータをもとに、日本の研究開発の現状を要約します。約160の指標から、研究開発費・研究者数・論文・特許の主要データを国際比較で整理しました。
目次
要点
- 日本の研究開発費は 20.4兆円(2023年、OECD推計)で主要国中 3位
- 研究開発費の対GDP比は 3.42% で、韓国(4.96%)に次ぐ高水準
- 論文数は世界 5位(7.0万件)だが、Top10%論文は 13位 に低下
- パテントファミリー数は 6.5万件 で20年以上連続 世界1位
- 研究者数は 70.1万人(FTE換算)で主要国中 3位、ただし女性比率は18.5%にとどまる
研究開発費の国際比較
2023年の日本の研究開発費総額は20.4兆円(OECD推計、総務省統計ベースでは22.0兆円)で、米国・中国に次ぐ世界3位です。
| 順位 | 国 | 研究開発費 | 対前年比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 米国 | 91.0兆円 | +6.2% |
| 2位 | 中国 | 87.4兆円 | +13.8% |
| 3位 | 日本 | 20.4兆円 | +6.9% |
| 4位 | ドイツ | 17.1兆円 | +3.7% |
| 5位 | 韓国 | 13.7兆円 | +5.0% |
| 6位 | 英国 | 10.5兆円 | +6.5% |
| 7位 | フランス | 8.3兆円 | +3.4% |
※英国は2022年の値
セクター別の構成(日本、2023年)
| セクター | 金額 | 主要国中の順位 |
|---|---|---|
| 企業 | 16.1兆円 | 3位 |
| 大学 | 2.3兆円 | 5位 |
| 公的機関 | 1.8兆円 | 4位 |
企業部門が全体の約7割を占めます。大学部門は2000年代以降ほぼ横ばいで推移しており、中国・ドイツ・英国に抜かれました。
研究開発費の対GDP比(2023年)
※英国は2022年の値
日本の対GDP比は3.42%で、韓国(4.96%)に次ぐ水準です。ただし、企業の売上高に占める研究開発費は全産業で3.1%(2023年度)にとどまり、米国の5.1%(2022年)を下回ります。特に非製造業の差が大きく、日本1.2%に対して米国は4.7%です。
研究者数
2024年の日本の研究者数は70.1万人(FTE換算)で、中国・米国に次ぐ世界3位です。
| 順位 | 国 | 研究者数 | 年 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 300.1万人 | 2023年 |
| 2位 | 米国 | 168.2万人 | 2022年 |
| 3位 | 日本 | 70.1万人 | 2024年 |
| 4位 | ドイツ | 49.9万人 | 2023年 |
| 5位 | 韓国 | 49.0万人 | 2023年 |
人口当たり研究者数と女性比率
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 人口1万人当たり研究者数(日本) | 56.7人 |
| 同(韓国、主要国中1位) | 94.8人 |
| 女性研究者数 | 18.3万人 |
| 女性研究者比率 | 18.5% |
人口1万人当たりの研究者数では韓国(94.8人)やドイツ(59.0人)を下回ります。女性研究者の比率は18.5%で、主要国の中で低い水準にあります。
博士号取得者
人口100万人当たりの博士号取得者数は日本123人で主要国中6位です。米国・韓国は2000年頃には日本と同程度でしたが、その後大きく増加しました。近年は大学院入学者が増加に転じ、修士課程7.9万人(前年比+2.8%)、博士課程1.6万人(同+4.9%)となっています。
論文数と被引用数
論文数・被引用数は2021〜2023年の3年平均値(分数カウント法)です。
論文数の国際比較
| 順位 | 国 | 論文数 | 世界シェア |
|---|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 599,435件 | 29.1% |
| 2位 | 米国 | 289,791件 | 14.1% |
| 3位 | インド | 91,997件 | 4.5% |
| 4位 | ドイツ | 72,762件 | 3.5% |
| 5位 | 日本 | 70,225件 | 3.4% |
注目度の高い論文
| 指標 | 件数 | シェア | 世界順位 |
|---|---|---|---|
| 論文数(全体) | 70,225件 | 3.4% | 5位 |
| Top10%補正論文数 | 3,447件 | 1.7% | 13位 |
| Top1%補正論文数 | 293件 | 1.4% | 12位 |
論文総数は5位を維持していますが、被引用回数で上位10%に入るTop10%論文では13位に順位が下がります。質の面での国際的な存在感が課題です。
国際共著論文の割合(2023年)
日本の国際共著論文の割合は36.5%で、欧米主要国と比較すると低い水準です。分野別では「物理学」「臨床医学」のTop10%論文シェアが比較的高くなっています。
特許出願数
パテントファミリー数(2か国以上に出願された発明の数)で、日本は20年以上連続で世界1位を維持しています。
| 期間 | 日本の件数 | 世界シェア | 順位 |
|---|---|---|---|
| 1998-2000年 | 38,317件 | 27.9% | 1位 |
| 2008-2010年 | 58,228件 | 29.0% | 1位 |
| 2018-2020年 | 65,450件 | 24.3% | 1位 |
件数は増加傾向ですが、世界シェアは2000年代半ばから低下しています。中国が急速に伸び、2018〜2020年で3位(41,475件、15.4%)に浮上しました。
分野別では「一般機器」「電気工学」で高いシェアを持ちますが、「電気工学」「情報通信技術」「一般機器」は10年前と比べてシェアが縮小しています。
科学と技術のつながり
日本のパテントファミリーで学術論文を引用している割合(サイエンスリンケージ)は6.9%で、主要国中最低水準です(米国24.5%、英国24.4%)。科学的知見を技術開発に活かす経路が弱いことを示しています。
解説
研究開発費は高水準だが成長は鈍い
日本の研究開発費は20兆円超で世界3位、対GDP比も3%台と高い水準にあります。しかし米国・中国との差は拡大しており、特に中国は前年比+13.8%と急成長を続けています。日本の企業部門は2021年から2023年にかけて1.9兆円増加しましたが、大学部門は2000年代以降ほぼ横ばいです。
論文の「量」と「質」の乖離
論文総数は世界5位を維持する一方、引用度の高いTop10%論文では13位に後退しています。国際共著論文の割合も36.5%と低く、研究の国際的なネットワーク構築が課題です。
特許は世界1位だが科学との連携に課題
パテントファミリー数で20年以上世界1位を維持しており、日本の技術開発力の高さを示しています。一方で、論文引用率(サイエンスリンケージ)が6.9%と低いことから、基礎研究の成果が技術開発に十分に活用されていない可能性があります。
人材面の構造的な課題
研究者数は70万人で世界3位ですが、女性研究者比率は18.5%と低く、博士号取得者数の伸びも鈍い状況が続いてきました。ただし近年は博士課程の入学者が増加に転じており、改善の兆しが見られます。また、研究用消耗品の物価高騰(ヘリウムは2010年比7.2倍)も研究環境への影響が懸念されています。