経済産業省が毎月公表する「商業動態統計調査」の最新データを要約します。この記事では、2026年1月分の速報と2024年の年間データをもとに、小売業の販売額と業態別の動向を解説します。
目次
商業動態統計とは
商業動態統計調査は、経済産業省が毎月実施する基幹統計調査です。全国の卸売業・小売業の事業所・企業を対象に販売額等を調査し、商業の動向を把握します。
景気判断や消費動向分析の基礎資料として利用されます。調査は以下の構成で行われます。
- 甲調査 — 大規模卸売事業所を対象
- 乙調査 — それ以外の卸売・小売事業所を対象
- 業態別調査 — 百貨店・スーパー、コンビニ、ドラッグストア、家電大型専門店、ホームセンターを対象
速報は翌月末頃、確報は翌々月に公表されます。
要点
- 2024年の小売業年間販売額は167兆1,530億円(前年比 +2.5%)で4年連続の増加
- 2026年1月の小売業販売額は12兆9,540億円(前年同月比 +1.8%)
- ドラッグストアの成長が顕著で、2024年の販売額は8兆9,199億円(前年比 +6.9%)
- 百貨店はインバウンド需要を追い風に2024年は前年比 +6.3% と高い伸び
- 飲食料品小売業は物価上昇による名目増が続く一方、販売量ベースでは伸び悩み
小売業販売額の推移
小売業の年間販売額は2021年以降、4年連続で増加しています。物価上昇の影響で名目額が押し上げられている面もありますが、インバウンド需要の回復や消費行動の変化も寄与しています。
| 年 | 年間販売額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2019年 | 145兆470億円 | +0.1% |
| 2020年 | 146兆4,570億円 | — |
| 2021年 | 約150兆5,000億円 | 回復基調 |
| 2022年 | 約154兆4,000億円 | +2.6% |
| 2023年 | 163兆340億円 | +5.6% |
| 2024年 | 167兆1,530億円 | +2.5% |
2023年は前年比+5.6%と大きく伸びました。これは物価上昇に加え、新型コロナからの経済再開が本格化したことが背景です。2024年は伸び率がやや鈍化したものの、4年連続のプラスを維持しています。
最新月次データ(2026年1月)
| 項目 | 販売額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 商業販売額(計) | 50兆2,870億円 | +1.3% |
| 卸売業 | 37兆3,330億円 | +1.1% |
| 小売業 | 12兆9,540億円 | +1.8% |
業態別の動向
業態別販売額(2026年1月)
| 業態 | 販売額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| スーパー | 1兆4,348億円 | +3.3% |
| コンビニ | 1兆684億円 | +1.8% |
| ドラッグストア | 7,693億円 | +4.0% |
| 百貨店 | 5,391億円 | +2.2% |
| 家電大型専門店 | 4,534億円 | +9.6% |
| ホームセンター | 2,496億円 | +1.6% |
家電大型専門店が+9.6%と最も高い伸びを示しました。ドラッグストア(+4.0%)、スーパー(+3.3%)も堅調です。
業種別の動向(2026年1月)
| 業種 | 前年同月比 |
|---|---|
| 機械器具小売業 | +12.4% |
| 自動車小売業 | +9.6% |
| その他小売業 | +3.0% |
| 各種商品小売業(百貨店等) | +2.8% |
| 飲食料品小売業 | +1.8% |
| 医薬品・化粧品小売業 | +1.7% |
| 織物・衣服・身の回り品小売業 | -2.1% |
| 無店舗小売業 | -5.3% |
| 燃料小売業 | -7.3% |
機械器具・自動車が大幅増となった一方、燃料小売業(-7.3%)や無店舗小売業(-5.3%)はマイナスとなっています。
解説
物価上昇が販売額を押し上げ
飲食料品小売業は2021年11月以降、価格要因が販売額の増加に寄与し続けています。人件費・物流費の高騰や円安による輸入コストの上昇が背景にあり、販売額の増加には「量の増加」だけでなく「物価上昇による名目額の押し上げ」が含まれています。
家計調査で食料の実質消費支出が6年連続で減少していることからも、消費者は値上がりに対して購入量を抑える対応をとっていることがうかがえます。
インバウンド需要が百貨店を押し上げ
百貨店は2024年に前年比+6.3%と高い伸びを記録しました。訪日外国人旅行者数の回復により、ラグジュアリーブランド・化粧品・宝飾品などの高額品消費が好調です。
2026年1月も+2.2%のプラスを維持していますが、月ごとの変動は大きく、2025年12月は-1.2%となっています。
ドラッグストアの急成長
ドラッグストアは2019年の約6.8兆円から2024年の約8.9兆円へ、5年間で約30%成長しました。食品販売の拡大やヘルスケア需要の増加が成長を牽引しています。
日本チェーンドラッグストア協会の集計では、2024年の販売額は10兆307億円と初の10兆円超えとなり、店舗数も前年比+3.3%増加しています。
EC市場の拡大と実店舗への影響
BtoC-EC市場規模(物販・サービス・デジタル)は2024年に26兆1,225億円(前年比+5.15%)に達し、物販系のEC化率は9.78%まで上昇しています。
一方、商業動態統計上の「無店舗小売業」は2025年12月に-5.8%、2026年1月に-5.3%と減少が続いており、EC内での競争激化や統計上の分類の違いが影響している可能性があります。
主要数値
| 指標 | 数値 | 時点 |
|---|---|---|
| 小売業年間販売額 | 167兆1,530億円 | 2024年 |
| 小売業年間販売額(前年比) | +2.5% | 2024年 |
| 小売業月次販売額 | 12兆9,540億円 | 2026年1月 |
| 小売業月次販売額(前年同月比) | +1.8% | 2026年1月 |
| ドラッグストア販売額 | 8兆9,199億円 | 2024年 |
| BtoC-EC市場規模 | 26兆1,225億円 | 2024年 |
| 物販系EC化率 | 9.78% | 2024年 |