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社会

国民医療費の動向 — 48兆円を超えた医療費の全体像

最終更新: 2026年3月16日

厚生労働省「令和5年度 国民医療費の概況」をもとに、医療費の総額推移・年齢階級別・診療種類別・財源別の内訳を解説します。

厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」(2025年10月10日公表)をもとに、日本の国民医療費の全体像を要約します。国民医療費とは、医療機関等における保険診療の対象となる傷病の治療に要した費用の推計です。

目次

要点

  • 令和5年度の国民医療費は48兆915億円(前年度比+3.0%)で過去最高を更新
  • 国民1人当たり医療費は38万6,700円(前年度比+3.5%)
  • 65歳以上の医療費が全体の**60.1%**を占め、1人当たりでは65歳未満の約3.7倍
  • 訪問看護医療費が前年度比**+23.6%**と急増し、在宅医療へのシフトが加速
  • 財源の半分(50.2%)は保険料、37.5%が公費(税金)で賄われている

国民医療費の推移

国民医療費は長期的に増加傾向にあります。令和2年度はコロナ禍の受診控えにより一時的に減少しましたが、令和3年度以降は回復し、令和5年度には初めて48兆円を超えました。

年度 国民医療費(億円) 前年度比 1人当たり(千円) 対GDP比
2013年度 400,610 +2.2% 314.7 7.81%
2014年度 408,071 +1.9% 321.1 7.80%
2015年度 423,644 +3.8% 333.3 7.83%
2016年度 421,381 -0.5% 332.0 7.73%
2017年度 430,710 +2.2% 339.9 7.75%
2018年度 433,949 +0.8% 343.2 7.80%
2019年度 443,895 +2.3% 351.8 7.97%
2020年度 429,665 -3.2% 340.6 7.97%
2021年度 450,359 +4.8% 358.8 8.12%
2022年度 466,967 +3.7% 373.7 8.23%
2023年度 480,915 +3.0% 386.7 8.08%

1人当たり医療費と対GDP比

令和5年度の国民1人当たり医療費は38万6,700円で、前年度より1万3,000円(+3.5%)増加しました。

対GDP比は**8.08%**で、前年度の8.23%からやや低下しています。これは医療費の伸び(+3.0%)よりもGDPの伸び(+4.9%、595兆1,843億円)が大きかったためです。

年齢階級別の医療費

65歳以上の医療費は28兆8,806億円で、全体の60.1%を占めています。1人当たりでは65歳以上が79万7,200円と、65歳未満(21万8,000円)の約3.7倍に達します。

年齢階級 医療費(億円) 構成割合 1人当たり(千円)
0〜14歳 27,688 5.8% 195.4
15〜44歳 58,422 12.1% 148.3
45〜64歳 105,998 22.0% 306.8
65歳未満 計 192,108 39.9% 218.0
65歳以上 計 288,806 60.1% 797.2
75歳以上(再掲) 191,503 39.8% 953.8

75歳以上の後期高齢者に限ると、1人当たり医療費は95万3,800円に達し、全体の約4割を占めています。

診療種類別の内訳

医科診療医療費が全体の**71.8%**を占め、次いで薬局調剤(17.6%)、歯科診療(6.9%)の順です。

診療種類 医療費(億円) 構成割合 前年度比
医科診療(入院) 178,580 37.1% +2.9%
医科診療(入院外) 166,918 34.7% +1.3%
歯科診療 32,945 6.9% +2.1%
薬局調剤 84,563 17.6% +5.8%
訪問看護 5,727 1.2% +23.6%
入院時食事・生活等 7,437 1.5% +2.0%
療養費等 4,744 1.0% +2.9%

訪問看護医療費は5,727億円と規模は小さいものの、前年度比**+23.6%**と突出した伸びを示しており、在宅医療への移行が進んでいることがわかります。薬局調剤医療費も+5.8%と全体平均を上回る伸びです。

財源別の内訳

国民医療費の財源は、保険料が半分(50.2%)、公費(国庫+地方)が37.5%、患者負担等が12.3%という構成です。

財源 金額(億円) 構成割合
公費 180,331 37.5%
— 国庫 119,252 24.8%
— 地方 61,079 12.7%
保険料 241,383 50.2%
— 事業主 105,613 22.0%
— 被保険者 135,770 28.2%
患者負担等 59,201 12.3%

制度区分別では、後期高齢者医療給付分が17兆2,072億円(35.8%)を占め、前年度比+4.6%と増加しています。

傷病分類別の医療費

医科診療医療費を傷病分類別に見ると、循環器系の疾患が最も多く、次いで**新生物(腫瘍)**となっています。

傷病分類 医療費(億円) 構成割合
循環器系の疾患 62,834 18.2%
新生物(腫瘍) 51,994 15.0%
筋骨格系及び結合組織の疾患 27,581 8.0%
損傷・中毒等 26,977 7.8%
呼吸器系の疾患 25,979 7.5%

上位2分類(循環器系・新生物)だけで医科診療医療費の3分の1を占めています。

解説

医療費増加の構造的要因

国民医療費の増加は主に3つの要因によるものです。第一に、高齢化の進行です。65歳以上の1人当たり医療費は65歳未満の約3.7倍であり、高齢者人口の増加が医療費全体を押し上げています。第二に、医療技術の高度化です。新薬や先端医療の導入により、診療単価が上昇しています。第三に、薬局調剤医療費の増加(+5.8%)に見られるように、高額な医薬品の使用が拡大しています。

コロナ禍の影響と回復

令和2年度は受診控えの影響で前年度比-3.2%と大幅に減少しましたが、令和3年度以降は回復に転じ、令和5年度には48兆円を突破しました。コロナ前の令和元年度(44.4兆円)と比べて約3.7兆円(+8.3%)の増加です。

在宅医療へのシフト

訪問看護医療費が前年度比+23.6%と急増しています。これは、入院から在宅医療への移行を推進する政策や、在宅での療養を希望する高齢者の増加を反映しています。規模は5,727億円と全体の1.2%ですが、増加ペースは他の診療種類を大きく上回っています。

財源の課題

医療費の半分は保険料で賄われていますが、高齢化に伴い後期高齢者医療給付分(35.8%)の増加が続いています。現役世代の保険料負担と公費(税金)の投入とのバランスが、今後の医療制度の持続可能性における主要な課題です。

出典

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