厚生労働省が毎月公表する「毎月勤労統計調査」の最新データを要約します。この記事では、2026年1月分の速報値と2025年の年間結果をもとに、日本の賃金動向を解説します。
目次
毎月勤労統計調査とは
毎月勤労統計調査は、厚生労働省が常用労働者5人以上の事業所を対象に毎月実施する調査です。賃金・労働時間・雇用の動向を把握するための基幹統計であり、景気判断や政策立案の基礎資料として利用されています。
主な指標は以下の通りです。
- 現金給与総額(名目賃金) — きまって支給する給与と特別に支払われた給与の合計
- 所定内給与 — 労働契約で定められた所定労働時間に対する給与
- 実質賃金指数 — 名目賃金を消費者物価指数で割った、賃金の実質的な購買力を示す指標
基準年は2020年(2020年平均 = 100)です。
要点
- 2026年1月の現金給与総額は 301,314円(前年同月比 +3.0%)で、堅調な伸びが継続
- 実質賃金は前年同月比 +1.4% と、物価上昇の鈍化を受けてプラスに転じた
- 所定内給与は 269,198円(前年同月比 +3.0%)で、基本給の引き上げが反映
- 2025年の年間では名目賃金が +2.3% 増加した一方、実質賃金は -1.3% と3年連続のマイナス
- パートタイム労働者の時間当たり給与は 1,447円(前年同月比 +3.7%)と高い伸び
名目賃金の前年同月比推移
現金給与総額(事業所規模5人以上)の前年同月比(%)推移です。2025年前半は賞与の変動で上下がありましたが、年間を通じて名目賃金はプラスを維持しています。
主要数値
2026年1月(速報値)
| 指標 | 金額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 現金給与総額(就業形態計) | 301,314円 | +3.0% |
| きまって支給する給与 | 289,018円 | +3.0% |
| 所定内給与 | 269,198円 | +3.0% |
| 特別に支払われた給与 | 12,296円 | +3.8% |
就業形態別
| 区分 | 現金給与総額 | 前年同月比 | 所定内給与 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 一般労働者 | 389,218円 | +3.3% | 344,498円 | +3.2% |
| パートタイム労働者 | 111,923円 | +2.6% | 106,963円 | +2.9% |
| パート時間当たり給与 | 1,447円 | +3.7% | — | — |
実質賃金指数(2020年平均 = 100)
| 指標 | 指数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 実質賃金(持家の帰属家賃を除く総合で実質化) | 82.3 | +1.4% |
| 実質賃金(総合で実質化) | 83.9 | +1.6% |
2025年 年間結果(速報値)
| 指標 | 金額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 現金給与総額(就業形態計) | 355,919円 | +2.3% |
| きまって支給する給与 | 287,436円 | +2.0% |
| 所定内給与 | 267,551円 | +2.0% |
| 特別に支払われた給与 | 68,483円 | +3.8% |
実質賃金(2025年 年間)
| 指標 | 指数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 実質賃金(持家の帰属家賃を除く総合で実質化) | 98.0 | -1.3% |
| 実質賃金(総合で実質化) | 99.8 | -0.8% |
名目賃金の年次推移
| 年 | 現金給与総額(前年比) | 実質賃金(前年比) | 消費者物価指数(前年比) |
|---|---|---|---|
| 2020年 | -1.2% | -1.2% | +0.0% |
| 2021年 | +0.3% | +0.6% | -0.3% |
| 2022年 | +2.0% | -1.0% | +3.0% |
| 2023年 | +1.2% | -2.5% | +3.8% |
| 2024年 | +2.8% | -0.3% | +3.2% |
| 2025年(速報) | +2.3% | -1.3% | +3.7% |
※ 実質賃金は消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で実質化した値 ※ データ公表日: 2026年3月9日(2026年1月分速報)、2026年2月9日(2025年分速報)
解説
名目賃金は堅調に推移
2026年1月の現金給与総額は301,314円で、前年同月比 +3.0% となりました。一般労働者の所定内給与が +3.2% と高い伸びを示しており、2025年の春闘賃上げ(連合集計で +5.10%)の効果が引き続き反映されています。
2025年の年間では現金給与総額が前年比 +2.3% と、2024年の +2.8% からはやや鈍化したものの、30年ぶりの高い伸びが続いています。
実質賃金は2026年1月にプラス転換
2025年は年間を通じて実質賃金がマイナスとなり、前年比 -1.3% でした。名目賃金の上昇(+2.3%)を消費者物価の上昇(+3.7%)が上回ったためです。
しかし、2026年1月は実質賃金が前年同月比 +1.4% とプラスに転じました。名目賃金の伸び(+3.0%)に対し、消費者物価の上昇率が +1.7% まで鈍化したことが主因です。エネルギー価格の下落(ガソリン暫定税率廃止・電気ガス代支援策の再開)が物価上昇を抑え、賃金の購買力が改善しました。
パートタイム労働者の時給上昇が続く
パートタイム労働者の時間当たり給与は1,447円で、前年同月比 +3.7% と高い伸びが続いています。2025年年間でも +3.8% と一般労働者の所定内給与(+2.5%)を上回っており、最低賃金の引き上げや人手不足を背景にパート時給の上昇が顕著です。
労働時間は減少傾向
2025年の総実労働時間は前年比 -1.4% と減少しました。所定外労働時間(残業時間)は -2.6% と大幅に減少しており、働き方改革の進展が背景にあります。