厚生労働省「令和5年度 介護保険事業状況報告(年報)」(2025年8月公表)および「令和5年度 介護給付費等実態統計」をもとに、日本の介護保険事業の現状を要約します。介護保険制度は2000年4月に創設され、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みとして運営されています。
目次
要点
- 令和5年度の介護費用総額は11兆7,186億円(前年度比+3.0%)で過去最高を更新
- 要介護・要支援認定者数は708万人(令和6年3月末時点)で、制度開始時の約2.8倍
- 第9期(2024〜2026年度)の第1号被保険者保険料は全国平均月額6,225円で過去最高
- 居宅サービスが給付費全体の約45%を占め、在宅介護が中心的な役割を果たしている
- 75歳以上の認定率は**31.1%**で、後期高齢者の約3人に1人が要介護・要支援認定を受けている
介護費用の推移
介護保険の費用総額は制度開始以来、一貫して増加しています。2000年度の3.6兆円から2023年度は11.7兆円へと約3.3倍に拡大しました。
| 年度 | 費用額(億円) | 給付費(億円) | 前年度比(費用額) |
|---|---|---|---|
| 2000年度 | 36,273 | 32,427 | — |
| 2005年度 | 64,464 | 57,943 | — |
| 2010年度 | 78,363 | 72,536 | — |
| 2015年度 | 98,189 | 92,290 | +1.4% |
| 2016年度 | 100,627 | 94,443 | +2.5% |
| 2017年度 | 102,654 | 96,266 | +2.0% |
| 2018年度 | 106,045 | 99,622 | +3.3% |
| 2019年度 | 108,782 | 102,311 | +2.6% |
| 2020年度 | 110,686 | 104,317 | +1.8% |
| 2021年度 | 111,271 | 105,100 | +0.5% |
| 2022年度 | 113,778 | 105,100 | +2.3% |
| 2023年度 | 117,186 | 108,263 | +3.0% |
費用額は利用者負担を含む総額、給付費は利用者負担を除いた保険給付分です。
要介護認定者数の推移
要介護・要支援認定者数は令和6年3月末時点で708万人に達し、前年度比14万人(+2.0%)の増加です。制度開始時(2000年4月:256万人)から約2.8倍に増えています。
要介護度別の構成(令和6年3月末)
| 要介護度 | 構成割合 |
|---|---|
| 要支援1 | 14.4% |
| 要支援2 | 14.1% |
| 要介護1 | 20.7% |
| 要介護2 | 16.8% |
| 要介護3 | 13.1% |
| 要介護4 | 12.6% |
| 要介護5 | 8.3% |
要介護1が最も多く、全体の約2割を占めています。要支援1・2を合わせた軽度の認定者が全体の約3割に達しています。
認定率
- 第1号被保険者数(65歳以上): 3,589万人(令和6年3月末)
- 認定率(第1号被保険者に占める割合): 19.4%
- 75歳以上の認定率: 31.1%
65歳以上の約5人に1人、75歳以上では約3人に1人が要介護・要支援の認定を受けています。
サービス種類別の給付費構成
令和5年度の介護サービス費用額累計は11兆5,139億円(介護給付費等実態統計・原審査ベース)です。
| サービス区分 | 費用額(億円) | 構成比 |
|---|---|---|
| 居宅サービス | 50,410 | 44.9% |
| 施設サービス | 36,648 | 32.7% |
| 地域密着型サービス | 19,732 | 17.6% |
| 居宅介護支援 | 5,357 | 4.8% |
居宅サービスが全体の約45%を占め、在宅での介護が中心です。利用者数が多いサービスは、福祉用具貸与(295万人)、通所介護(168万人)、訪問介護(161万人)の順です。
月平均受給者数(令和5年度)
サービスの月平均受給者数は609万人(前年度比+1.7%)です。
| サービス区分 | 月平均受給者数(万人) | 構成比 |
|---|---|---|
| 居宅サービス | 422 | 69.2% |
| 地域密着型サービス | 96 | 15.8% |
| 施設サービス | 91 | 15.0% |
第1号被保険者の保険料推移
介護保険料(第1号被保険者・65歳以上)の全国加重平均は、制度開始以来ほぼ一貫して上昇しています。
| 計画期 | 期間 | 月額保険料(全国平均) | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 2000〜2002年度 | 2,911円 | — |
| 第2期 | 2003〜2005年度 | 3,293円 | +13.1% |
| 第3期 | 2006〜2008年度 | 4,090円 | +24.2% |
| 第4期 | 2009〜2011年度 | 4,160円 | +1.7% |
| 第5期 | 2012〜2014年度 | 4,972円 | +19.5% |
| 第6期 | 2015〜2017年度 | 5,514円 | +10.9% |
| 第7期 | 2018〜2020年度 | 5,869円 | +6.4% |
| 第8期 | 2021〜2023年度 | 6,014円 | +2.5% |
| 第9期 | 2024〜2026年度 | 6,225円 | +3.5% |
第1期の月額2,911円から第9期の6,225円へと約2.1倍に増加しました。第9期では、保険料を引き上げた保険者が712(45.3%)、据え置きが585(37.2%)、引き下げが276(17.5%)です。
地域差
- 最高(都道府県平均): 大阪府 7,486円
- 最低(都道府県平均): 山口県 5,568円
- 保険者単位の最高: 大阪市 9,249円
- 保険者単位の最低: 東京都小笠原村 3,374円
解説
制度創設からの変化
介護保険制度は2000年に「介護の社会化」を目的として創設されました。当初の費用総額3.6兆円から2023年度は11.7兆円と約3.3倍に拡大しています。認定者数も256万人から708万人へと急増しました。これは高齢者人口の増加に加え、制度の浸透によるサービス利用の拡大を反映しています。
国民医療費との比較
国民医療費(2023年度:48.1兆円)と比べると、介護費用(11.7兆円)はその約4分の1の規模です。ただし、増加率では介護費用の方が高く、2000年度を起点にした増加倍率は医療費の約1.6倍に対して介護費用は約3.3倍です。
在宅介護の拡大
給付費の約45%を居宅サービスが占め、受給者数では約70%が居宅サービスの利用者です。政策的に「施設から在宅へ」の方向が推進されており、地域密着型サービス(17.6%)と合わせると、施設以外のサービスが全体の6割超を占めています。
保険料の負担増
第1号被保険者の保険料は24年間で約2.1倍になりました。厚生労働省の推計では、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年度以降、要介護認定者のさらなる増加が見込まれています。2040年度には保険料が月額約9,000円に達するとの推計もあり、制度の持続可能性が課題となっています。
2024年度の介護報酬改定
2024年度に介護報酬改定が実施され、改定率は+1.59%(処遇改善等を含め実質+2.04%)となりました。従来3つに分かれていた処遇改善加算が一本化され、介護職員の賃金引き上げが図られています。