厚生労働省が毎月公表する「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の最新データを要約します。この記事では、2026年1月分の結果をもとに、日本の労働市場における求人・求職の動向を解説します。
目次
有効求人倍率とは
有効求人倍率は、全国のハローワーク(公共職業安定所)に登録された求人数を求職者数で割った値です。求職者1人あたりにどれだけの求人があるかを示し、労働市場の需給バランスを測る基幹指標です。
- 1倍を超える — 求人数が求職者数を上回り、人手不足の傾向
- 1倍を下回る — 求職者数が求人数を上回り、就職が厳しい状況
主な指標は以下の3つです。
- 有効求人倍率 — 有効期間内(約2か月間)の求人・求職の比率。パートを含む
- 新規求人倍率 — 当月新たに受け付けた求人・求職の比率
- 正社員有効求人倍率 — 正社員の求人に限定した比率
季節的な変動を除いた「季節調整値」が前月比較に使われます。ハローワークを通さない民間求人サイトの求人は含まれません。
要点
- 2026年1月の有効求人倍率(季節調整値)は 1.18倍 で、前月から0.02ポイント低下
- 正社員の有効求人倍率は 0.99倍 と1倍を下回り、正社員就職は依然として厳しい
- 新規求人(原数値)は前年同月比 4.6%減 で、企業の採用意欲にやや陰り
- 建築・土木技術者(7.10倍)や介護サービス(3.54倍)は深刻な人手不足が続く
- 都道府県別では 福井県 1.76倍(最高)、大阪府・福岡県 0.98倍(最低)と地域差が大きい
有効求人倍率の推移
有効求人倍率(年平均)の推移です。2018年の1.61倍をピークに、コロナ禍で急落。その後回復したものの、2024年以降は再び低下傾向にあります。
主要数値
2026年1月(月次データ・季節調整値)
| 指標 | 数値 | 前月比 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率 | 1.18倍 | -0.02pt |
| 新規求人倍率 | 2.11倍 | -0.03pt |
| 正社員有効求人倍率 | 0.99倍 | ±0pt |
職種別有効求人倍率(2026年1月)
| 職種 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 建築・土木・測量技術者 | 7.10倍 |
| 介護サービス | 3.54倍 |
| 営業 | 2.30倍 |
| 商品販売 | 1.97倍 |
| 接客・給仕 | 1.67倍 |
| 情報処理・通信技術者 | 1.62倍 |
| 一般事務 | 0.34倍 |
都道府県別有効求人倍率(2026年1月・就業地別・季節調整値)
| 区分 | 都道府県 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|
| 最高 | 福井県 | 1.76倍 |
| 最低 | 大阪府・福岡県 | 0.98倍 |
産業別の新規求人動向(2026年1月・前年同月比)
| 産業 | 前年同月比 |
|---|---|
| 教育・学習支援業 | +4.3% |
| 製造業 | +0.8% |
| 学術研究・専門・技術サービス業 | +0.3% |
| 情報通信業 | -7.0% |
| 卸売業・小売業 | -11.6% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | -13.8% |
有効求人倍率の年平均推移
| 年 | 有効求人倍率 | 新規求人倍率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2015年 | 1.20倍 | — | 回復期 |
| 2016年 | 1.36倍 | — | 上昇基調 |
| 2017年 | 1.50倍 | — | バブル期以来の高水準 |
| 2018年 | 1.61倍 | — | ピーク |
| 2019年 | 1.60倍 | — | 微減 |
| 2020年 | 1.18倍 | 1.95倍 | コロナ禍で急落 |
| 2021年 | 1.13倍 | 2.02倍 | コロナ禍の底 |
| 2022年 | 1.28倍 | 2.26倍 | 回復基調 |
| 2023年 | 1.31倍 | 2.29倍 | 緩やかな回復 |
| 2024年 | 1.25倍 | 2.25倍 | 再び低下 |
| 2025年 | 1.22倍 | 2.20倍 | 低下継続 |
※ データ公表日: 2026年3月3日(2026年1月分)
解説
コロナ前の水準に戻らない求人倍率
有効求人倍率は2018年の1.61倍をピークに、2019年に微減した後、2020年のコロナ禍で1.18倍へ急落しました。2021年に1.13倍で底を打ち、2022〜2023年にかけて回復しましたが、コロナ前の水準(1.6倍台)には遠く及びません。2024年以降は再び低下傾向に転じており、2025年の年平均は1.22倍でした。
2026年1月は1.18倍とさらに低下しています。有効求人が前月比0.1%減少する一方、有効求職者は0.9%増加しており、求職者の増加が倍率低下の要因です。
職種間の格差が顕著
職種別に見ると、有効求人倍率の差は非常に大きくなっています。建築・土木・測量技術者は7.10倍と極めて高く、1人の求職者に対して7件以上の求人がある状態です。介護サービスも3.54倍と慢性的な人手不足が続いています。
一方、一般事務は0.34倍と求職者に対して求人が大幅に不足しており、事務職への就職は競争が激しい状況です。このように、同じ労働市場でも職種によって需給バランスは大きく異なります。
地域による差
都道府県別では、福井県が1.76倍で最も高く、大阪府・福岡県が0.98倍で最も低くなっています。地方では人口流出に伴う人手不足で倍率が高く、大都市圏では求職者が多いため倍率が低い傾向があります。
正社員の求人倍率は1倍割れ
正社員の有効求人倍率は0.99倍と1倍を下回っています。パートを含む全体では1.18倍ですが、正社員に限ると求職者の方が多い状態です。正社員としての就職は引き続き厳しい環境にあります。
新規求人は減少傾向
新規求人(原数値)は前年同月比4.6%減で、産業別では宿泊業・飲食サービス業(-13.8%)、卸売業・小売業(-11.6%)、情報通信業(-7.0%)の減少が目立ちます。一方、教育・学習支援業(+4.3%)や製造業(+0.8%)は増加しており、産業間で求人動向に差があります。