国税庁「民間給与実態統計調査」(2024年分)と金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査」(2025年)をもとに、日本人の年収・貯蓄・金融資産の実態を要約します。平均値だけでなく中央値も併せて示し、より実感に近い数字で全体像を把握します。
目次
なぜ「平均値」と「中央値」の両方が必要か
年収や金融資産の統計では、一部の高所得者・高資産保有者が平均値を大きく引き上げます。そのため、平均値だけを見ると多くの人が「自分はそんなにもらっていない(持っていない)」と感じることがあります。
中央値は、全体を金額の少ない順に並べたとき真ん中に位置する人の値です。全体の半分がこの金額より多く、半分が少ないことを意味し、一般的な実感に近い数字になります。
要点
- 2024年の民間給与所得者の平均年収は478万円(過去最高・前年比3.9%増)
- 給与の中央値は約400万円台前半と推計され、平均値より70万円以上低い
- 二人以上世帯の金融資産は平均1,940万円だが、中央値は720万円(2025年調査)
- 単身世帯の金融資産は平均919万円に対し、中央値はわずか130万円
- 正社員の平均給与545万円に対し、非正規は206万円と約2.6倍の格差がある
平均年収の概要
国税庁「民間給与実態統計調査」(2024年分、2025年9月公表)による、1年を通じて勤務した給与所得者のデータです。
全体の平均給与
| 指標 | 金額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 平均給与 | 478万円 | +3.9% |
| 平均給料・手当 | 403万円 | +3.8% |
| 平均賞与 | 75万円 | +4.5% |
平均給与478万円は1949年の調査開始以来の過去最高で、4年連続の増加です。
男女別・雇用形態別
| 区分 | 平均給与 | 前年比 |
|---|---|---|
| 男性 | 587万円 | +3.2% |
| 女性 | 333万円 | +5.5% |
| 正社員(正職員) | 545万円 | +2.8% |
| 正社員以外(非正規) | 206万円 | +2.2% |
女性の伸び率(+5.5%)は男性(+3.2%)を上回っていますが、金額差は254万円と依然として大きい状況です。
業種別の平均給与
| 業種 | 平均給与 | 前年比 |
|---|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 832万円 | +7.4% |
| 金融業・保険業 | 702万円 | +7.7% |
| 情報通信業 | 660万円 | +1.6% |
| 建設業 | 565万円 | +3.2% |
| 製造業 | 568万円 | +6.5% |
| 医療・福祉 | 429万円 | +6.3% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 279万円 | +5.8% |
業種間の格差は最大で約3倍(電気・ガス等832万円 vs 宿泊・飲食279万円)に達しています。
年齢階層別の平均給与
年齢による給与の変化を見ると、男性は55〜59歳でピーク(735万円)を迎えます。女性は年齢による差が比較的小さく、25〜59歳で300万円台に収まっています。
| 年齢階層 | 男女計 |
|---|---|
| 19歳以下 | 118万円 |
| 20〜24歳 | 277万円 |
| 25〜29歳 | 407万円 |
| 40〜44歳 | 516万円 |
| 45〜49歳 | 540万円 |
| 50〜54歳 | 559万円 |
| 55〜59歳 | 572万円 |
| 65〜69歳 | 370万円 |
| 70歳以上 | 305万円 |
※ 男性のピークは55〜59歳で735万円
給与の分布と中央値
給与所得者5,137万人の給与階級別の分布です。最も人数が多いのは300〜400万円の層(826万人・16.1%)で、次いで400〜500万円の層(787万人・15.3%)となっています。
| 給与階級 | 人数(万人) | 構成比 | 累積構成比 |
|---|---|---|---|
| 100万円以下 | 393 | 7.7% | 7.7% |
| 100〜200万円 | 571 | 11.1% | 18.8% |
| 200〜300万円 | 677 | 13.2% | 32.0% |
| 300〜400万円 | 826 | 16.1% | 48.1% |
| 400〜500万円 | 787 | 15.3% | 63.4% |
| 500〜600万円 | 606 | 11.8% | 75.2% |
| 600〜700万円 | 391 | 7.6% | 82.8% |
| 700〜800万円 | 271 | 5.3% | 88.1% |
| 800〜900万円 | 174 | 3.4% | 91.5% |
| 900〜1,000万円 | 121 | 2.4% | 93.9% |
| 1,000万円超 | 321 | 6.2% | 100.0% |
累積構成比から、50%に達するのは400〜500万円の階級内であり、給与の中央値はおよそ400万円台前半と推計されます。平均値(478万円)より70万円以上低く、一部の高所得者が平均を押し上げていることがわかります。
金融資産の保有状況
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査」(2025年、2025年12月公表)による金融資産の保有状況です。
ここでの「金融資産」は、運用目的または将来に備えて蓄えている預貯金・保険・有価証券等を指し、日常的な出し入れに備えている預貯金や実物資産(土地・住宅等)は含みません。
全体の金融資産保有額
| 世帯区分 | 平均値 | 中央値 | 平均と中央値の差 |
|---|---|---|---|
| 二人以上世帯 | 1,940万円 | 720万円 | 1,220万円 |
| 単身世帯 | 919万円 | 130万円 | 789万円 |
二人以上世帯では平均値と中央値に1,220万円もの開きがあります。単身世帯に至っては平均値919万円に対し中央値は130万円と、約7倍の差です。これは少数の高額資産保有世帯が平均を大きく引き上げていることを示しています。
金融資産の内訳(単身世帯・2025年)
| 種別 | 金額(万円) | 構成比 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 349 | 38.0% |
| 有価証券(株式・投資信託等) | 373 | 40.6% |
| 保険 | 158 | 17.2% |
| その他 | 38 | 4.1% |
有価証券の割合が預貯金を上回っており、近年の投資への関心の高まりが反映されています。
金融資産を保有していない世帯
金融商品を「いずれも保有していない」と回答した世帯の割合は、近年増加傾向にあります。
| 世帯区分 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|
| 二人以上世帯 | 2.6% | 3.1% | 3.0% | 5.4% |
| 単身世帯 | 4.9% | 4.9% | 5.0% | 11.1% |
2025年調査では単身世帯の約9人に1人が金融商品を一切保有していない状態です。
手取り年収(二人以上世帯)
二人以上世帯における過去1年間の手取り年収は以下の通りです。
| 指標 | 金額 |
|---|---|
| 平均値 | 609万円 |
| 中央値 | 500万円 |
年代別の金融資産
J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」(2024年)の年代別データです。
二人以上世帯
| 年代 | 平均値 | 中央値 |
|---|---|---|
| 20代 | 382万円 | 84万円 |
| 30代 | 677万円 | 180万円 |
| 40代 | 944万円 | 250万円 |
| 50代 | 1,168万円 | 250万円 |
| 60代 | 2,033万円 | 650万円 |
| 70代 | 1,923万円 | 800万円 |
単身世帯
| 年代 | 平均値 | 中央値 |
|---|---|---|
| 20代 | 161万円 | 15万円 |
| 30代 | 459万円 | 90万円 |
| 40代 | 883万円 | 85万円 |
| 50代 | 1,087万円 | 30万円 |
| 60代 | 1,679万円 | 350万円 |
| 70代 | 1,634万円 | 475万円 |
単身世帯では、40代・50代の中央値がそれぞれ85万円・30万円と極めて低く、平均値との乖離が顕著です。50代単身世帯では4割以上が金融資産を保有しておらず、平均値(1,087万円)は一部の高資産保有者によって押し上げられています。
※ 年代別データは2024年調査(2024年12月公表)のもの。2025年調査の年代別詳細は統計表を参照
解説
平均年収は過去最高だが、実感は異なる
2024年の平均給与478万円は統計開始以来の最高額であり、物価上昇を受けた賃上げの広がりを反映しています。しかし、給与の分布は右に裾を引く形(正規分布ではなく対数正規分布に近い形状)であり、中央値はおよそ400万円台前半と推計されます。最も人数の多い層は300〜400万円で、平均値の印象とは異なる実態が見えてきます。
正規・非正規の格差
正社員の平均給与545万円に対し、非正規は206万円と2.6倍の格差があります。非正規の平均賞与はわずか12万円(正社員は101万円)です。1年を通じて勤務した非正規雇用者は1,256万人(全体の24.4%)であり、この層が全体の中央値を引き下げる要因の一つとなっています。
金融資産は「持つ人」と「持たない人」の二極化
金融資産の平均値と中央値の差は、資産の二極化を端的に示しています。二人以上世帯の平均1,940万円に対し中央値は720万円で、全世帯の半数以上が平均を下回っています。単身世帯では平均919万円に対し中央値130万円と、さらに極端な偏りがあります。
金融商品を一切保有しない世帯の割合も2025年に急増しており(単身世帯で11.1%)、資産形成格差の拡大が進んでいます。
年代別にみた資産形成の特徴
年代が上がるにつれ平均値は増加しますが、中央値は40代・50代で伸び悩む傾向があります。特に単身世帯の50代では中央値がわずか30万円と、老後資金の準備が進んでいない層が多いことを示しています。60代以降で中央値が上昇するのは、退職金の受け取りや相続などが主な要因と考えられます。
