観光庁が公表するインバウンド消費動向調査の最新データを要約します。この記事では、2025年暦年(速報)および2025年10-12月期(1次速報)をもとに、訪日外国人の旅行消費額の動向を解説します。
目次
インバウンド消費動向調査とは
インバウンド消費動向調査は、観光庁が四半期ごとに公表する統計調査です。訪日外国人旅行者の旅行中の消費実態を把握するため、全国の主要空海港で訪日外国人にアンケートを実施し、旅行消費額を推計しています。
主な指標は以下の通りです。
- 旅行消費額(総額) — 訪日外国人が日本滞在中に支出した金額の合計
- 一人当たり旅行支出 — 旅行者1人あたりの平均支出額
- 費目別内訳 — 宿泊費・飲食費・買物代・交通費・娯楽等サービス費の構成比
要点
- 2025年の訪日外国人旅行消費額は 9兆4,559億円 で 過去最高 を更新(前年比+16.4%)
- 2019年(4兆8,135億円)と比較して 約2倍 の水準に到達
- 国別では 中国が2兆円超 で消費額トップ(構成比21.2%)、次いで台湾・米国
- 一人当たり支出が高いのは ドイツ(39.4万円)・英国(39.0万円)・豪州(39.0万円)
- 費目別では 宿泊費が最大(36.6%) で、買物代(27.0%)を上回る構造に変化
年間旅行消費額の推移
2015年以降の年間旅行消費額(億円)の推移です。2020〜2022年はコロナ禍で大幅に減少しましたが、2023年以降は急回復し、2025年に過去最高を更新しました。
| 年 | 消費額(億円) | 前年比 | 2019年比 | 1人当たり支出(万円) |
|---|---|---|---|---|
| 2015年 | 34,771 | — | — | 17.6 |
| 2016年 | 37,476 | +7.8% | — | 15.6 |
| 2017年 | 44,162 | +17.8% | — | 15.4 |
| 2018年 | 45,189 | +2.3% | — | 15.3 |
| 2019年 | 48,135 | +6.5% | 基準年 | 18.5 |
| 2020年 | 7,446 | ▲84.5% | ▲84.5% | — |
| 2021年 | 1,208 | ▲83.8% | ▲97.5% | — |
| 2022年 | 8,987 | +644% | ▲81.3% | — |
| 2023年 | 53,065 | +490% | +10.2% | 21.3 |
| 2024年 | 81,257 | +53.1% | +68.8% | 22.7 |
| 2025年 | 94,559 | +16.4% | +96.4% | 22.9 |
国・地域別の消費額
上位10か国・地域(2025年 暦年)
| 順位 | 国・地域 | 消費額(億円) | 構成比 | 前年比 | 1人当たり支出(万円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 20,026 | 21.2% | +16.0% | 24.6 |
| 2 | 台湾 | 12,110 | 12.8% | +11.1% | 18.6 |
| 3 | 米国 | 11,241 | 11.9% | +24.7% | 34.1 |
| 4 | 韓国 | 9,864 | 10.4% | +2.7% | 10.5 |
| 5 | 香港 | 5,613 | 5.9% | ▲15.0% | 22.6 |
| 6 | 豪州 | 4,104 | 4.3% | +17.5% | 39.0 |
| 7 | タイ | 2,512 | 2.7% | +11.0% | 20.4 |
| 8 | シンガポール | 2,294 | 2.4% | +14.4% | 31.8 |
| 9 | カナダ | 2,196 | 2.3% | +24.4% | 32.2 |
| 10 | 英国 | 2,071 | 2.2% | +24.9% | 39.0 |
- 上位5か国・地域(中国・台湾・米国・韓国・香港)で全体の 62.2% を占める
- 中国は消費額トップだが、1人当たり支出は前年比▲11.0%と減少傾向
- 欧州からの伸びが顕著: ドイツ+58.3%、スペイン+32.9%、イタリア+34.0%
- 韓国は訪日客数1位(946万人)だが、1人当たり支出は10.5万円と最も低い
一人当たり支出の上位国(2025年)
| 国・地域 | 1人当たり支出(万円) |
|---|---|
| ドイツ | 39.4 |
| 英国 | 39.0 |
| 豪州 | 39.0 |
| フランス | 36.0 |
| スペイン | 36.4 |
欧米・豪州は滞在日数が長く、1人当たりの消費額が高い傾向にあります。
費目別の消費額
2025年 費目別構成(暦年)
| 費目 | 消費額(億円) | 構成比 |
|---|---|---|
| 宿泊費 | 34,617 | 36.6% |
| 買物代 | 25,490 | 27.0% |
| 飲食費 | 20,711 | 21.9% |
| 交通費 | 9,465 | 10.0% |
| 娯楽等サービス費 | 4,218 | 4.5% |
一人当たり費目別支出(一般客)
| 費目 | 金額(円) |
|---|---|
| 宿泊費 | 84,153 |
| 買物代 | 61,014 |
| 飲食費 | 50,279 |
| 交通費 | 22,974 |
| 娯楽等サービス費 | 10,251 |
| 合計 | 228,809 |
※ 平均泊数は9.5泊(前年差+0.5泊)
四半期別推移
2023年以降の四半期別推移です。2024年以降は毎四半期2兆円を超える水準が定着しています。
| 四半期 | 消費額(億円) | 1人当たり支出(万円) |
|---|---|---|
| 2023年1-3月期 | 10,103 | 21.1 |
| 2023年4-6月期 | 12,319 | 20.9 |
| 2023年7-9月期 | 13,801 | 20.9 |
| 2023年10-12月期 | 16,831 | 22.0 |
| 2024年1-3月期 | 17,700 | 21.1 |
| 2024年4-6月期 | 19,186 | 23.9 |
| 2024年7-9月期 | 21,402 | 22.0 |
| 2024年10-12月期 | 22,969 | 23.6 |
| 2025年1-3月期 | 22,803 | 22.3 |
| 2025年4-6月期 | 25,043 | 23.7 |
| 2025年7-9月期 | 21,384 | 22.0 |
| 2025年10-12月期 | 25,330 | 23.4 |
解説
9.5兆円で過去最高を更新
2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円となり、前年(8兆1,257億円)を16.4%上回って過去最高を更新しました。2019年の4兆8,135億円と比較すると約2倍の水準です。訪日外客数の増加(4,268万人、前年比+15.8%)に加え、一人当たり支出も22.9万円と微増しており、量・質の両面で成長が続いています。
消費構造の変化 — 宿泊費が最大に
費目別では宿泊費(36.6%)が買物代(27.0%)を上回り、最大の支出項目となっています。コロナ前は「爆買い」に象徴される買物中心の消費構造でしたが、現在は宿泊・飲食・体験といった「コト消費」にシフトしています。娯楽等サービス費も4,218億円と増加傾向にあります。
欧米・豪州市場の存在感
消費額の伸びが顕著なのは欧米・豪州市場です。ドイツ(+58.3%)、イタリア(+34.0%)、スペイン(+32.9%)など欧州からの消費が急増しています。欧米・豪州の旅行者は滞在日数が長く、1人当たり支出が35〜40万円と高いため、人数のシェア以上に消費額への貢献が大きくなっています。
中国は消費額トップだが単価は低下
中国は消費額2兆円超で国別トップを維持していますが、1人当たり支出は24.6万円で前年比▲11.0%と減少しています。訪日客数の増加(前年比+30.3%)によって総額は伸びているものの、消費単価の低下傾向が見られます。一方、韓国は訪日客数最多(946万人)ですが、1人当たり支出は10.5万円と最も低い水準です。
円安の影響
円安が訪日外国人の消費を後押ししている面があります。外国通貨ベースでは日本での買い物や宿泊が割安に感じられるため、消費額の増加につながっています。ただし、一人当たり支出(円ベース)の伸びは+0.9%と緩やかであり、消費額の増加は主に訪日客数の増加によるものです。