厚生労働省「2023年(令和5年)国民生活基礎調査」(2024年7月公表)をもとに、日本の世帯所得と生活意識の現状を要約します。国民生活基礎調査は、世帯の所得・貯蓄・生活意識などを把握するために毎年実施される基幹統計調査です。2023年調査は中間年の簡易調査で、所得データの対象年は2022年です。
目次
要点
- 全世帯の平均所得は524万2千円、中央値は405万円で、平均以下の世帯が62.2%を占める
- 生活が「苦しい」と感じている世帯は**59.6%**で、前年(51.3%)から8.3ポイント悪化
- 相対的貧困率は15.4%、子どもの貧困率は11.5%(2022年調査・2021年所得ベース)
- 高齢者世帯の平均所得は304万9千円で、収入の約63%を公的年金に依存
世帯所得の分布
2022年の1世帯当たり平均所得金額は524万2千円です。ただし、所得の分布は低い方に偏っており、中央値は405万円と平均を大きく下回ります。平均所得金額以下の世帯が全体の**62.2%**を占めています。
| 所得階級 | 世帯割合 | 累積割合 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 6.3% | 6.3% |
| 100〜200万円 | 14.6% | 20.9% |
| 200〜300万円 | 14.5% | 35.4% |
| 300〜400万円 | 12.9% | 48.3% |
| 400〜500万円 | 10.2% | 58.5% |
| 500〜600万円 | 8.7% | 67.2% |
| 600〜700万円 | 7.3% | 74.5% |
| 700〜800万円 | 5.7% | 80.2% |
| 800〜900万円 | 4.4% | 84.6% |
| 900〜1,000万円 | 3.5% | 88.1% |
| 1,000万円以上 | 11.9% | 100.0% |
前年の2022年調査(2021年所得ベース)では平均所得が545万7千円、中央値が423万円であり、2023年調査では平均が3.9%減少、中央値も18万円低下しています。
世帯類型別の所得
世帯類型によって所得水準に大きな差があります。児童のいる世帯は平均812万6千円と高い一方、高齢者世帯は304万9千円にとどまります。
| 世帯類型 | 平均所得金額 | 主な所得源(割合) |
|---|---|---|
| 全世帯 | 524万2千円 | 稼働所得(73.2%) |
| 高齢者世帯 | 304万9千円 | 公的年金・恩給(62.9%) |
| 児童のいる世帯 | 812万6千円 | 稼働所得(92.3%) |
高齢者世帯では公的年金が総所得の100%という世帯が**41.7%**を占めており、年金への依存度が高い状況です。
生活意識の状況
2023年7月時点の生活意識を見ると、生活が「苦しい」と回答した世帯は59.6%で、前年の51.3%から8.3ポイント悪化しました。
| 生活意識 | 2022年調査 | 2023年調査 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 大変苦しい | 20.2% | 26.5% | +6.3pt |
| やや苦しい | 31.0% | 33.1% | +2.1pt |
| 「苦しい」計 | 51.3% | 59.6% | +8.3pt |
| 普通 | 42.1% | 35.8% | -6.3pt |
| ややゆとりがある | 5.5% | 3.9% | -1.6pt |
| 大変ゆとりがある | 1.1% | 0.7% | -0.4pt |
世帯類型別では、児童のいる世帯で65.0%、高齢者世帯で**59.0%**が「苦しい」と回答しており、いずれも前年から大幅に悪化しています。
相対的貧困率
相対的貧困率は3年に1度の大規模調査でのみ公表されます。最新のデータは2022年調査(2021年所得ベース・OECD新基準)です。
| 指標 | 率 |
|---|---|
| 相対的貧困率 | 15.4% |
| 子どもの貧困率 | 11.5% |
| 子どもがいる現役世帯 | 10.6% |
| — うち大人が一人(ひとり親世帯) | 44.5% |
| — うち大人が二人以上 | 8.6% |
等価可処分所得の中央値は254万円で、その半分の127万円が貧困線です。ひとり親世帯の貧困率は**44.5%**と際立って高い水準です。
高齢者世帯の状況
2023年調査時点で、65歳以上の者のみで構成される高齢者世帯は1,656万世帯で、全世帯の**30.4%**を占めています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 高齢者世帯数 | 1,656万世帯 |
| 全世帯に占める割合 | 30.4% |
| 平均所得金額(2022年所得) | 304万9千円 |
| 公的年金・恩給の割合 | 62.9% |
| 稼働所得の割合 | 26.1% |
| 年金が総所得の100%の世帯 | 41.7% |
| 生活意識「苦しい」 | 59.0% |
高齢者世帯の稼働所得割合は26.1%あり、年金受給年齢に達しても働き続ける世帯が一定数存在することを示しています。
解説
平均値と中央値の乖離
全世帯の平均所得524万2千円と中央値405万円には約120万円の差があります。これは高所得世帯が平均値を引き上げているためで、「典型的な世帯の所得」は平均値よりも中央値に近い水準です。平均所得以下の世帯が62.2%を占めていることからも、所得分布が低い方に偏っていることがわかります。
生活意識の急激な悪化
2023年調査で「苦しい」と回答した世帯は59.6%と、前年の51.3%から大幅に悪化しました。「大変苦しい」が6.3ポイント増加しており、物価上昇の影響が家計の実感として表れていると考えられます。児童のいる世帯では65.0%が「苦しい」と回答し、教育費や生活費の負担感が強まっています。
ひとり親世帯の深刻な状況
相対的貧困率を見ると、「大人が一人」の子どもがいる世帯(ひとり親世帯)の貧困率は44.5%と、大人が二人以上の世帯(8.6%)と比べて5倍以上の格差があります。ひとり親世帯が経済的に極めて厳しい状況に置かれていることを示す数値です。
高齢社会と年金依存
高齢者世帯は全世帯の30.4%を占め、その所得の約63%を公的年金に依存しています。年金が唯一の収入源という世帯が41.7%に上り、年金制度の持続可能性が世帯生活に直結する構造です。一方で、稼働所得が26.1%あることは、就労を続ける高齢者が増えていることを反映しています。