環境省が公表する「日本の温室効果ガス排出・吸収量」の最新データを要約します。この記事では、2023年度の確報値をもとに、日本の温室効果ガス排出量の推移と構造を解説します。
目次
温室効果ガス排出量とは
温室効果ガス排出・吸収量は、環境省と国立環境研究所が毎年算定・公表する統計です。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づく報告義務の一環として、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン等4ガス(HFCs・PFCs・SF6・NF3)の排出量と、森林等による吸収量を算定しています。
主な指標は以下の通りです。
- 総排出量 — すべての温室効果ガスをCO2換算で合計した値
- 排出・吸収量 — 総排出量から森林吸収源等による吸収量を差し引いた値
- 2013年度比 — パリ協定に基づくNDC(国が決定する貢献)の基準年との比較
要点
- 2023年度の温室効果ガス排出量は 約10億7,100万トン(CO2換算)で、過去最低を記録
- 前年度比 ▲4.0%、2013年度比 ▲23.3% と削減が進行
- 吸収量を差し引いた排出・吸収量は 約10億1,700万トン で、2013年度比 ▲27.1%
- 全部門でエネルギー起源CO2が減少し、再エネ拡大と省エネが寄与
- 2030年度目標(2013年度比▲46%)に対して、残り約19ポイントの削減が必要
排出量の推移
各年度の温室効果ガス総排出量(億トンCO2換算)の推移です。2013年度をピークに減少傾向が続いています。
| 年度 | 排出量(億トン) | 前年度比 | 2013年度比 |
|---|---|---|---|
| 2013年 | 13.95 | — | — |
| 2014年 | 13.44 | ▲3.7% | ▲3.7% |
| 2015年 | 13.18 | ▲1.9% | ▲5.5% |
| 2016年 | 13.05 | ▲1.0% | ▲6.5% |
| 2017年 | 12.90 | ▲1.1% | ▲7.5% |
| 2018年 | 12.40 | ▲3.9% | ▲11.1% |
| 2019年 | 11.90 | ▲4.0% | ▲14.7% |
| 2020年 | 11.25 | ▲5.5% | ▲19.4% |
| 2021年 | 11.47 | +2.0% | ▲17.8% |
| 2022年 | 11.16 | ▲2.7% | ▲20.0% |
| 2023年 | 10.71 | ▲4.0% | ▲23.3% |
※ 2020年度はCOVID-19の影響による経済活動の停滞が寄与。2021年度は経済回復により一時的に増加
主要数値
総排出量と吸収量(2023年度・確報値)
| 項目 | 数値 | 2013年度比 |
|---|---|---|
| 温室効果ガス総排出量 | 10億7,100万トン | ▲23.3% |
| 森林吸収源等による吸収量 | 5,370万トン | — |
| 排出・吸収量(吸収量控除後) | 10億1,700万トン | ▲27.1% |
※ 2025年4月公表
ガス種別排出量(2023年度)
| ガス種 | 排出量(百万トン) | 構成比 | 2013年度比 |
|---|---|---|---|
| CO2(エネルギー起源) | 922 | 86.1% | ▲25.4% |
| CO2(非エネルギー起源) | 67 | 6.3% | ▲15.0% |
| メタン(CH4) | 29.4 | 2.7% | ▲9.9% |
| 一酸化二窒素(N2O) | 15.8 | 1.5% | ▲19.7% |
| 代替フロン等4ガス | 37.0 | 3.5% | +28.2% |
| 合計 | 1,071 | 100% | ▲23.3% |
※ 代替フロン等4ガス(HFCs・PFCs・SF6・NF3)は2013年度比で増加しているが、2022年度比では▲3.9%と減少に転じている
部門別CO2排出量(電気・熱配分後、2023年度)
| 部門 | 排出量(百万トン) | 構成比 | 2013年度比 | 前年度比 |
|---|---|---|---|---|
| 産業(工場等) | 340 | 34.3% | ▲26.7% | ▲4.0% |
| 運輸(自動車等) | 190 | 19.2% | ▲15.2% | ▲0.7% |
| 業務その他 | 165 | 16.7% | ▲29.7% | ▲6.2% |
| 家庭 | 147 | 14.9% | ▲29.7% | ▲6.8% |
| エネルギー転換 | 81 | 8.2% | ▲23.7% | ▲3.8% |
| 非エネルギー起源 | 67 | 6.8% | ▲15.0% | ▲5.0% |
2030年度目標との比較
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 2013年度排出量(基準年) | 約14.0億トン |
| 2023年度排出・吸収量(現状) | 約10.2億トン |
| 現状の削減率(2013年度比) | ▲27.1% |
| 2030年度目標 | 2013年度比 ▲46% |
| 目標達成に必要な追加削減 | 約19ポイント |
解説
10年連続の排出量減少
日本の温室効果ガス総排出量は、2013年度の約14.0億トンをピークに減少傾向が続いています。2023年度は約10.7億トンで、1990年度以降の過去最低を更新しました。10年間で約3.2億トン(23.3%)の削減を達成しています。
減少の主な要因
排出量の減少には複数の要因が寄与しています。電力部門では再生可能エネルギーの導入拡大(電源構成の22.9%)と原子力発電の再稼働(同8.5%)により、火力発電の割合が68.6%に低下しました。産業・業務・家庭の各部門でも省エネルギーの進展によりエネルギー消費量が減少しています。GDP当たりの温室効果ガス排出量は11年連続で低下し、過去最小を更新しました。
代替フロンの動向
温室効果ガスの大部分(92.3%)を占めるCO2が減少する一方で、代替フロン等4ガスは2013年度比で28.2%増加しています。これはオゾン層を破壊する特定フロンから代替フロン(HFCs)への転換が進んだためです。ただし、低GWP(地球温暖化係数)冷媒への移行が進み、2022年度以降は減少に転じています。
吸収量の推移
森林吸収源等による吸収量は5,370万トンで、排出量の約5%に相当します。森林の高齢化に伴いCO2吸収能力が低下する傾向にあり、2014年度の6,900万トンから減少しています。ブルーカーボン(藻場等による吸収)の計上も始まっていますが、規模は約34万トンと限定的です。
2030年度目標への道のり
日本は2030年度までに2013年度比46%の排出削減を目標としています。2023年度時点で27.1%の削減を達成していますが、目標まで約19ポイントの追加削減が必要です。残り7年間で年平均約2.7ポイントの削減ペースが求められ、これまでの年平均約2.7ポイントの削減実績とほぼ同等のペースを維持する必要があります。さらに、2035年度には60%削減、2040年度には73%削減という長期目標も掲げられています。