環境省が毎年公表する「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」の最新版(令和7年版、2025年6月公表)を要約します。この記事では、廃棄物の排出・リサイクルの現状、生物多様性の動向、環境産業の成長を解説します。
目次
環境白書とは
環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書は、環境省が毎年国会に提出する年次報告書です。3つの白書を統合した形式で、環境問題の全体像を俯瞰します。
令和7年版は以下の3つの視点で構成されています。
- 「市場」 — 環境とビジネス、グリーンな消費と持続可能な社会
- 「政府」 — 循環経済・自然再興・炭素中立の統合的推進
- 「国民」 — 地域・暮らしでの脱炭素ライフスタイル
要点
- 令和5年度のごみ総排出量は 約3,897万トン で、1人1日あたり 851グラム に減少
- リサイクル率は 19.5%(家電4品目を含めると20.5%)で、最終処分場の残余年数は 24.8年
- 環境省レッドリストの絶滅危惧種は 3,587種。第5次レッドリストの策定が進行中
- 環境産業の市場規模は 約130兆円(2023年)で、2000年比 約2.1倍 に成長
廃棄物の排出とリサイクル
ごみ排出量の推移
令和5年度(2023年度)の一般廃棄物の排出状況です。ごみ総排出量は減少傾向が続いています。
| 指標 | 令和5年度 | 令和4年度 |
|---|---|---|
| ごみ総排出量 | 3,897万トン | 4,034万トン |
| 1人1日あたりごみ排出量 | 851グラム | 880グラム |
| 1人1日あたり家庭系ごみ | 475グラム | 496グラム |
| 生活系ごみ | 2,712万トン | 2,841万トン |
| 事業系ごみ | 1,185万トン | 1,194万トン |
リサイクルと最終処分
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 総資源化量 | 763万トン |
| リサイクル率 | 19.5% |
| リサイクル率(家電4品目含む) | 20.5% |
| 最終処分量 | 316万トン |
| 1人1日あたり最終処分量 | 69グラム |
| 減量処理率 | 99.2% |
| 直接焼却率 | 80.3% |
| 直接埋立率 | 0.8% |
最終処分場の状況(令和5年度末)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 最終処分場数(市町村等設置) | 1,554か所 |
| 残余容量 | 9,575万m³ |
| 残余年数 | 24.8年 |
生物多様性の現状
絶滅危惧種の動向
環境省は「第5次レッドリスト」の策定を進めています。すでに公表された分類群の状況は以下の通りです。
| 分類群 | 公表時期 | 絶滅危惧種数 | 第4次との比較 |
|---|---|---|---|
| 植物・菌類(5分類群) | 2025年3月 | 2,063種 | 207種減少 |
| 鳥類 | 2026年3月 | 108種 | 10種増加 |
| 爬虫類・両生類 | 2026年3月 | 96種 | 12種増加 |
現時点の絶滅危惧種の総計は 3,587種 です。残りの動物分類群(哺乳類・淡水魚類・昆虫類など)は令和7〜8年度にかけて公表予定です。
主なカテゴリ変更(第5次レッドリスト)
- トキ — 絶滅危惧IA類(CR)→ 絶滅危惧IB類(EN)に引き下げ(個体数回復)
- タンチョウ — 絶滅危惧II類(VU)→ 準絶滅危惧(NT)に引き下げ
- アカモズ — 絶滅危惧IB類(EN)→ 絶滅危惧IA類(CR)に引き上げ
環境産業の市場規模
| 指標 | 2023年 | 2000年比 |
|---|---|---|
| 環境産業の市場規模 | 約130兆円 | 約2.1倍 |
| 環境産業の雇用規模 | 約292万人 | 約1.5倍 |
主要数値
グリーンファイナンスの動向(2024年)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| グリーンファイナンス全体 | 4.3兆円 |
| うちボンド市場 | 3.1兆円 |
| うちローン市場 | 1.2兆円 |
企業の環境対応
| 指標 | 日本 | 世界 |
|---|---|---|
| SBT認定企業数 | 1,479社 | 7,469社 |
| RE100参加企業数 | 91社 | 444社 |
| 再エネ100宣言 RE Action 参加団体数 | 381団体 | — |
| エコマーク認定商品数 | 53,990 | — |
※ 2025年3月末時点
解説
廃棄物の減少と課題
日本のごみ総排出量は長期的な減少傾向にあります。令和5年度は約3,897万トンで、1人1日あたり851グラムまで減少しました。人口減少の影響もありますが、リデュース(排出抑制)やリサイクルの取り組みが寄与しています。
一方で、リサイクル率は19.5%にとどまっています。直接焼却率が80.3%と高い一方で、資源として回収・再利用される割合はまだ限定的です。最終処分場の残余年数は24.8年で、新規の処分場確保が難しくなる中、さらなるリサイクル推進が課題です。
生物多様性の二つの側面
第5次レッドリストでは、分類群によって異なる傾向が見られます。植物・菌類は絶滅危惧種が207種減少し、改善の兆しがあります。トキやタンチョウなど、保護活動が功を奏した種もあります。
一方で鳥類は10種、爬虫類・両生類は12種が新たに絶滅危惧種に加わりました。開発による生息地の縮小や気候変動の影響が続いています。残りの動物分類群の評価結果を含めた全体像は、令和8年度に明らかになる見通しです。
環境産業の成長
環境産業の市場規模は約130兆円(2023年)に達し、2000年の約62兆円から2.1倍に成長しました。雇用規模も約292万人と拡大しています。
グリーンファイナンスも拡大が続き、2024年は4.3兆円規模に達しています。SBT(科学に基づく削減目標)の認定企業数は1,479社で、世界全体の約20%を日本企業が占めています。環境対策が企業のコスト要因からビジネス機会へと変化しつつあります。
令和7年版の注目テーマ
令和7年版白書は「市場・政府・国民」の3つの視点から、循環経済・自然再興・炭素中立を統合的に推進する方向性を打ち出しています。国際的にはCOP29やCBD-COP16の成果を踏まえ、30by30目標(2030年までに陸と海の30%を保全)やネイチャーポジティブ(自然再興)への取り組みが加速しています。