総務省が2025年7月に公表した「令和7年版 情報通信白書」と「令和6年 通信利用動向調査」のデータをもとに、日本のデジタル化の現状を要約します。
目次
要点
- 情報通信産業の名目GDPは 57.4兆円(2023年)で全産業中最大規模
- インターネット利用率は 85.6%、スマートフォン世帯保有率は 90.5%
- 企業のクラウドサービス利用率は 8割超に到達し、約10年で倍増
- 個人の生成AI利用経験は 26.7% で前年の9.1%から約3倍に急増
- IMD世界デジタル競争力ランキングで日本は 31位、アジア主要国との差は依然大きい
ICT産業の市場規模
情報通信産業の名目GDPは2023年に57.4兆円となり、前年の55.5兆円から3.5兆円増加しました。全産業の中で最大規模の産業分野です。
個人のデジタル利用状況
令和6年通信利用動向調査(調査時点: 2024年8月末)による個人のデジタルサービス利用状況です。
インターネット利用率・端末保有率
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| インターネット利用率(全体) | 85.6% |
| 13〜69歳の利用率 | 9割超 |
| スマートフォン世帯保有率 | 90.5% |
| スマートフォン個人保有率 | 80.5% |
| スマホでのネット利用 | 74.4% |
| PCでのネット利用 | 46.8% |
スマートフォンでのインターネット利用がPCを27.6ポイント上回り、主要なインターネット接続端末となっています。テレビとスマートフォンの世帯保有率がほぼ同水準に達しました。
SNS利用状況
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| SNS利用率(インターネット利用者のうち) | 81.9% |
| YouTube利用率 | 88.3% |
| X(旧Twitter)利用率 | 50.3% |
SNS利用はインターネット利用目的の第1位で、80歳以上でも5割超が利用しています。利用目的は「知人とのコミュニケーション」(87.7%)が最多で、「情報を探すため」(64.0%)が続きます。
テレワーク実施状況
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 企業の導入率 | 47.3%(前年比 -2.6pt) |
| 個人の実施率 | 28.2%(前年から微増) |
| 導入効果ありと回答 | 86.3% |
企業のテレワーク導入率は令和4年以降減少傾向です。導入目的はコロナ対応(66.0%)が依然最多ですが、ワークライフバランス向上(51.6%)や業務効率性向上(46.9%)が増加しています。未導入企業の理由は「テレワークに適した仕事がない」(79.3%)が最多です。
企業のデジタル化
クラウドサービスの利用
企業のクラウドサービス利用率は8割超に達し、約10年で倍増しました。
| 利用サービス | 利用率 |
|---|---|
| ファイル保管・データ共有 | 71.0% |
| 社内情報共有・ポータル | 57.6% |
| 電子メール | 56.8% |
利用企業の 88.2% が「効果があった」と回答しています。利用理由は「場所・機器を選ばずに利用できる」(50.2%)が最多です。
IoT・AIシステムの導入
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| IoT/AIシステム導入済み企業 | 18.4% |
| 導入予定を含む | 29.7% |
| 導入効果ありと回答 | 84.8% |
| 産業別トップ(金融・保険業) | 44.2% |
導入目的は効率化・業務改善(88.1%)が圧倒的に多く、事業の全体最適化(30.8%)が続きます。
DX推進の課題
デジタル化の取組を未実施と回答した企業が約50% に上ります。大企業は約25%が未実施である一方、中小企業では約70%が未実施と、規模による格差が顕著です。
DXの主な課題は以下の通りです。
- 人材不足(48.7%)
- アナログな文化・価値観(27.8%)
- DXの役割分担が不明確(27.4%)
生成AIの利用動向
個人の生成AI利用経験は2024年に26.7%となり、2023年の9.1%から約3倍に急増しました。20代では約45%が利用経験を持ちます。
日本の26.7%は前年から大幅に増加したものの、米国(68.8%)や中国(81.2%)と比較すると依然として低い水準です。
企業における生成AI活用方針の策定状況は約50%(2023年度の約43%から増加)で、大企業は約56%、中小企業は約34%と差があります。
デジタル競争力の国際比較
IMD世界デジタル競争力ランキング2024で、日本は 31位(前年32位から1ランク上昇)です。
| 国・地域 | 順位 |
|---|---|
| シンガポール | 3位 |
| 韓国 | 6位 |
| 香港 | 7位 |
| 台湾 | 9位 |
| 日本 | 31位 |
「将来の準備」の項目では38位と前年から6つ低下しており、人材・研究開発・技術応用の分野で改善の余地が大きいことが示されています。
また、デジタル関連サービスの収支赤字は2024年に 3.4兆円 に達し、2018年の1.3兆円から拡大が続いています。
解説
デジタル利用の「広がり」と「深さ」のギャップ
日本のインターネット利用率やスマートフォン保有率は高水準に達しており、SNS利用率も8割を超えるなど、個人レベルでのデジタル利用は広く浸透しています。一方で、生成AIの利用経験は米国・中国に大きく後れを取っており、新しいデジタル技術の活用では差が開いています。
企業のDX推進は二極化
クラウドサービスの利用率が8割超に達する一方、デジタル化の取組を未実施の企業が約50%を占めるという二極化が進んでいます。特に中小企業の約70%がデジタル化未実施であり、人材不足が最大の課題として挙げられています。
5G・通信インフラの拡大
5G基地局のカバー率は全国98.1%(2024年3月時点)に達し、固定系インターネットトラヒックは前年比12.7%増の38.9Tbps、移動通信は同15.6%増の8.1Tbpsと、通信量の拡大が続いています。
デジタル収支の赤字拡大
デジタル関連サービスの収支赤字が3.4兆円に拡大していることは、日本がデジタルサービスの「消費国」としての側面が強まっていることを示しています。国産デジタルサービスの競争力強化が今後の課題です。