総務省統計局が公表する消費者物価指数(CPI)の年平均データをもとに、2016年から2025年までの10年間の物価動向を整理します。デフレ傾向からコロナ禍を経てインフレが加速するまでの推移を解説します。
目次
要点
- 2016〜2021年は前年比 -0.2%〜+1.0% の低インフレ・デフレ傾向が続いた
- 2022年に前年比 +2.5% と急上昇し、2023年・2025年は +3.2% に達した
- 2022年以降の4年間は連続して前年比2%超となり、約30年ぶりの持続的な物価上昇局面
- エネルギー価格と食料品価格が物価変動の主要因
- 2025年の指数値は111.9(2020年=100)で、5年間で約12%上昇
CPI年平均の推移(10年間)
総合指数の前年比(%)の推移です。2016〜2021年の低インフレ期と、2022年以降のインフレ加速期で明確に局面が分かれています。
主要数値
年平均CPI(2016年〜2025年)
| 年 | 指数値(2020年=100) | 総合 前年比 | コアCPI 前年比 | コアコアCPI 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 98.1 | -0.1% | -0.3% | +0.6% |
| 2017 | 98.6 | +0.5% | +0.5% | +0.1% |
| 2018 | 99.5 | +1.0% | +0.9% | +0.4% |
| 2019 | 100.0 | +0.5% | +0.6% | +0.6% |
| 2020 | 100.0 | 0.0% | -0.2% | +0.2% |
| 2021 | 99.8 | -0.2% | -0.2% | -0.5% |
| 2022 | 102.3 | +2.5% | +2.3% | +1.1% |
| 2023 | 105.6 | +3.2% | +3.1% | +4.0% |
| 2024 | 108.5 | +2.7% | +2.5% | +2.4% |
| 2025 | 111.9 | +3.2% | +3.1% | +3.0% |
※ 基準年: 2020年(2020年 = 100) ※ 2016〜2019年の指数値は2015年基準からの接続指数(2020年基準に換算) ※ 出典: 総務省統計局「消費者物価指数 年平均結果」
10年間で大きな変動があった品目
| 品目・費目 | 期間 | 変動 |
|---|---|---|
| エネルギー | 2022年 | 原油高・円安で電気代・ガス代が急騰 |
| エネルギー | 2025年後半〜 | 暫定税率廃止・補助金により下落 |
| 食料品(全般) | 2022〜2025年 | 原材料高・円安で年+4〜7%の上昇が継続 |
| コメ類 | 2025年 | 前年比 +64.5〜98.4% の異常な高騰 |
| 携帯電話通信料 | 2021年 | 格安プラン導入で -33.3% |
| 宿泊料 | 2020年後半 | Go Toトラベルで急落 |
解説
第1期: 低インフレ・デフレ傾向(2016〜2021年)
2016年から2021年の6年間は、CPIの前年比が -0.2%〜+1.0% の狭い範囲にとどまりました。日銀の物価安定目標(2%)には遠く及ばない状況が続きました。
- 2016年: 円高と原油安でエネルギー価格が下落し、総合は -0.1%
- 2018年: 原油価格の回復でエネルギーが上昇し +1.0% に。10年間で最初に1%台に到達
- 2019年: 消費税率引上げ(8%→10%)があったが、軽減税率と幼児教育無償化の相殺で +0.5% にとどまる
- 2020年: コロナ禍の需要減退に加え、Go Toトラベルで宿泊料が急落。前年比 0.0%
- 2021年: 携帯電話通信料の大幅値下げ(-33.3%)がCPI全体を約0.9ポイント押し下げ、-0.2% に
第2期: インフレ加速(2022〜2025年)
2022年以降、物価は一転して持続的な上昇局面に入りました。4年連続で前年比2%超となり、1989〜1992年以来、約30年ぶりの事象です。
- 2022年(+2.5%): ロシアのウクライナ侵攻を契機にエネルギー・原材料価格が急騰。円安(1ドル=150円台)が輸入物価を押し上げ
- 2023年(+3.2%): コアコアCPIが +4.0% と42年ぶりの高水準に達し、エネルギー以外の基調的なインフレの強さを示した
- 2024年(+2.7%): 食料品の値上げが主因。食料全体で +4.3%、生鮮食品は +7.0%
- 2025年(+3.2%): コメ類が前年比 +64.5〜98.4% と異常な高騰。コーヒー豆(+51.6%)、鶏卵(+12.8%)なども大幅上昇
物価変動の構造的な変化
10年間を通じて、物価変動の構造が変化しています。
- 前半(2016〜2021年): エネルギー価格と政策要因(消費税、Go To、携帯料金)が物価を左右。食料品・サービスの基調的な上昇は弱い
- 後半(2022〜2025年): エネルギーに加え、食料品・サービスなど幅広い品目で価格転嫁が進行。コアコアCPIが2%を超える基調的なインフレに
2020年を100とした指数値でみると、2025年の111.9は5年間で約12%の物価上昇を意味します。2016年の98.1と比較すると、10年間で約14%の上昇です。
