こども家庭庁「令和7年版こども白書」(2025年6月13日閣議決定)をもとに、日本の子どもをめぐる状況と政府の支援策を要約します。こども白書は、こども基本法に基づく年次報告で、旧「少子化社会対策白書」「子供・若者白書」「子供の貧困に関する報告」を統合したものです。
目次
要点
- 子どもの相対的貧困率は11.5%(2021年)で改善傾向だが、ひとり親世帯は**44.5%**と依然高い
- 不登校児童生徒数(小中学校)は約34万6千人(令和5年度)で11年連続増加、過去最多
- いじめ認知件数は約73万3千件(令和5年度)で過去最多を更新
- 児童虐待相談対応件数は22万5,509件(令和5年度)で増加が続く
- 政府は「こども未来戦略」で3.6兆円規模の加速化プランを推進中
子どもの相対的貧困率
子どもの相対的貧困率は、2012年の16.3%をピークに改善傾向にあり、2021年は11.5%(約9人に1人)まで低下しました。ただし、ひとり親世帯の貧困率は**44.5%**と依然として高水準です。
| 調査年 | 子どもの貧困率 | ひとり親世帯の貧困率 |
|---|---|---|
| 2003年 | 13.7% | 58.7% |
| 2006年 | 14.2% | 54.3% |
| 2009年 | 15.7% | 50.8% |
| 2012年 | 16.3% | 54.6% |
| 2015年 | 13.9% | 50.8% |
| 2018年 | 14.0% | 48.1% |
| 2021年 | 11.5% | 44.5% |
改善の背景には、共働き世帯の増加による稼働所得の向上があります。一方、ひとり親世帯の改善幅は限定的であり、子どもの貧困対策の中心的な課題として残っています。
不登校児童生徒数
小中学校の不登校児童生徒数は令和5年度(2023年度)に約34万6千人となり、11年連続で増加し過去最多を更新しました。
| 年度 | 小学校 | 中学校 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | 44,841人 | 119,687人 | 164,528人 |
| 2019年度 | 53,350人 | 127,922人 | 181,272人 |
| 2020年度 | 63,350人 | 132,777人 | 196,127人 |
| 2021年度 | 81,498人 | 163,442人 | 244,940人 |
| 2022年度 | 105,112人 | 193,936人 | 299,048人 |
| 2023年度 | 130,370人 | 216,112人 | 346,482人 |
小学校の不登校は5年間で約2.9倍に急増しています。不登校の主な理由として、「学校生活に対してやる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」が上位に挙がっています。また、約13万4千人が学校内外の専門的支援につながっていないことも課題です。
いじめ認知件数
小・中・高等学校・特別支援学校におけるいじめの認知件数は、令和5年度に約73万3千件で過去最多を更新しました。
| 年度 | 認知件数 | 重大事態件数 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 543,933件 | 602件 |
| 2019年度 | 612,496件 | 723件 |
| 2020年度 | 517,600件 | 514件 |
| 2021年度 | 615,351件 | 706件 |
| 2022年度 | 681,948件 | 919件 |
| 2023年度 | 732,568件 | 1,306件 |
学校種別では小学校が約58万9千件と大部分を占めます。いじめの重大事態(生命・身体への重大な被害や長期欠席を伴うもの)は1,306件で、前年度から387件(+42.1%)増加しました。認知件数の増加は、学校による積極的な認知の推進や、1人1台端末を活用した早期発見の取り組みも影響しています。
児童虐待相談対応件数
全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は、令和5年度に22万5,509件となり、増加が続いています。
| 年度 | 件数 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 159,838件 | +19.5% |
| 2019年度 | 193,780件 | +21.2% |
| 2020年度 | 205,044件 | +5.8% |
| 2021年度 | 207,659件 | +1.3% |
| 2022年度 | 214,843件 | +3.5% |
| 2023年度 | 225,509件 | +5.0% |
虐待種別では心理的虐待が約13万5千件(59.8%)と最も多く、面前DV(子どもの前での配偶者間暴力)が含まれます。次いで身体的虐待が約5万2千件(22.9%)、ネグレクト(育児放棄)が約3万5千件(15.6%)です。
こども・若者の意識 {#こどもの意識}
こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」(令和5年度)では、日本の子ども・若者の自己肯定感が国際的に低い水準にあることが示されています。
| 項目 | 日本 | 参考(他国の水準) |
|---|---|---|
| 自分自身に満足している | 57.4% | 他国はいずれも7割以上 |
| 自分には長所がある | 62.3% | 7か国中最低 |
| 自分は役に立たないと強く感じる | 51.8% | 7か国中最高 |
| 将来の夢を持っている | 60.1% | 米国84.7%、中国88.2% |
また、ユニセフ「レポートカード16」(2020年)では、日本の子どもの身体的健康は38か国中1位である一方、精神的幸福度は37位(ワースト2位)と報告されています。身体面の豊かさに比べ、精神面の充実が大きな課題です。
政府の子ども支援策
こども大綱(2023年12月閣議決定)
こども基本法に基づく政府全体の基本方針です。「こどもまんなか社会」の実現を目指し、子ども・若者が「権利の主体」であることを明示しています。具体的施策は「こどもまんなか実行計画」として毎年改定されます。
こども未来戦略・加速化プラン
「次元の異なる少子化対策」として、2024〜2026年度の3年間で3.6兆円規模の加速化プランを推進しています。
| 分野 | 予算規模 | 主な施策 |
|---|---|---|
| 若い世代の所得向上 | 約1.7兆円 | 児童手当の拡充、出産・子育て応援交付金 |
| 子育て世帯への支援拡充 | 約1.3兆円 | 保育士配置基準の改善、妊婦支援給付の創設 |
| 共働き・共育ての推進 | 約0.6兆円 | 出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金の創設 |
主な施策の詳細:
- 児童手当の拡充(2024年10月〜): 所得制限の撤廃、高校生年代まで延長、第3子以降は月3万円
- 保育士配置基準の改善: 4・5歳児は30:1から25:1へ(2024年度〜)、1歳児は6:1から5:1へ(2025年度〜)
- 出生後休業支援給付金の創設(2025年4月〜)
- 育児時短就業給付金の創設(2025年4月〜)
解説
子どもの貧困の改善と残る課題
子どもの相対的貧困率は2012年の16.3%から2021年の11.5%へと約5ポイント改善しました。共働き世帯の増加による世帯所得の向上が主因です。しかし、ひとり親世帯の貧困率は44.5%と依然として高く、OECD諸国の中でも高い水準にあります。児童手当の拡充や児童扶養手当の改善が進んでいますが、ひとり親世帯への重点的な支援が引き続き求められます。
不登校の急増と支援体制
不登校児童生徒数は5年間で約2.1倍に急増しました。特に小学校は約2.9倍と増加が顕著です。コロナ禍での生活リズムの変化や、学校に対する考え方の多様化が背景にあるとされています。約13万4千人が学校内外の専門的支援を受けていない状況は、支援体制の整備が急務であることを示しています。教育支援センターやフリースクールなど、学校外の居場所の拡充が進められています。
いじめ認知件数の増加の背景
いじめ認知件数の増加は、いじめが増えていることだけでなく、学校が積極的にいじめを認知するようになったことも反映しています。2013年のいじめ防止対策推進法の施行以降、「いじめの積極的認知」が推進されており、早期発見・早期対応につながっています。一方、重大事態が1,306件と急増していることは深刻であり、認知した後の対応の質を高めることが課題です。
子どもの精神的幸福度
日本の子どもは身体的健康では世界トップクラスである一方、精神的幸福度は最低水準です。自己肯定感の低さや、将来への希望の乏しさが国際比較で際立っています。こども白書の特集「こどもの心身の悩みに寄り添える社会」でも、子どもの精神的な健康支援の強化が重点テーマとして取り上げられています。